『社会防衛』という概念
こういうニュースを見聞きすると、

そもそも、なんで出所させてたんだよ!
そんなヤツは、一生刑務所に閉じ込めとけよ!
と思う人は、多いと思います。
ここで考えたいのは、
『社会防衛』という概念です。
社会防衛(social defense)
社会の秩序と安全を守るために、再犯の危険がある者を社会から隔離すること。
具体的には、死刑や無期拘禁刑、心神喪失者の入院(医療観察法による処遇)、触法少年の施設送致などが含まれる。
第1回の記事でも述べたように、
刑罰の『隔離』機能は、
まさにこの『社会防衛』の為の機能です。
刑罰の『隔離』は『応報』の範囲内で
- 被害者に落ち度がなく、被告人に情状酌量の余地がない殺人は、死刑
- 被害者に落ち度がなく、被告人に情状酌量の余地がない暴行は、身体刑
第6回の記事で、
応報に寄せた刑罰の在り方として、
僕は、このように提言をしました。
例えば、
残虐な殺人をした者を、死刑に。
これは、応報の観点から当然なので、
社会防衛として犯人の命を奪うことも、
許容されて然るべきです。
しかし、
このような場合は、どうでしょうか?
残虐な性的暴行をした者を、死刑に。
性犯罪者の再犯率は非常に高いので、
彼らを一生社会から隔離することは、
社会防衛の観点から、極めて合理的です。
しかし、
その手段として死刑を選択するのは、
同害報復の原則を超越することであり、
許容されるべきではありません。
応報的刑罰だけでは、社会防衛は達成されない
- 被害者に落ち度がなく、被告人に情状酌量の余地がない暴行は、身体刑
仮に、上記通りの刑罰制度になった場合、
残虐な性的暴行をした犯人は、
鞭打ちを受ければ、罪を償ったことになります。
罪を償って釈放された犯人が、
応報刑の苦痛により、更生していればいいですが、
もし、全く更生していなかった場合は…?
新たな被害者が生まれる未来しか見えません。
このように、
応報的刑罰だけでは、社会防衛は達成されません。
だからこそ、
社会防衛に関しては、
刑罰とは別次元で考える必要があるのです。
国家的応報と社会防衛は、別次元で考える
罪に見合った刑罰の苦痛を与えることで、
“正義の回復”を図るとともに、
犯罪者に、反省と更生を促す。
まず、これが大前提です。
その上で、社会防衛の観点から、
刑罰とは別次元で、策を講じる必要があります。
再犯の可能性が高い者は、死刑か無期拘禁刑に
社会防衛の観点から、
再犯の可能性が高い者は、
決して社会に戻すべきではありません。
罪が殺人なら、死刑にすべきだし、
そうでないなら、無期拘禁刑にすべきだと、
僕は、強く思っています。
心神喪失者と触法少年の隔離も徹底を
また、忘れてはならないのは、
心神喪失者と、触法少年の存在です。
第39条
引用元:刑法第39条
- 心神喪失者の行為は、罰しない。
- 心神耗弱者の行為は、その刑を減軽する。
第41条
14歳に満たない者の行為は、罰しない。
引用元:刑法第41条
心神喪失者と13歳未満の少年は、
犯罪をしても刑罰を与えられません。
なぜなら、刑法では、
彼らに責任能力を認めていないからです。
しかし、
国家的応報の対象にならないのはいいとして、
再犯の可能性がある場合は、
しっかりと彼らを社会から隔離すべきです。
そして、
治療や、矯正教育が完了するまでは、
彼らを決して社会に戻すべきではありません。
社会防衛は『公共の福祉論』で正当化される
ここまでの僕の意見をお読みになって、



それって、人権的にどうなの?
と、思った人もいらっしゃるでしょう。
しかし、
憲法は、人権を無制限に認めていません。
という、但し書きを付けているのです。
再犯の可能性が高い者を社会に戻すことは、
明らかに公共の福祉に反しています。
そのため、
再犯の可能性が高い者は、
決して社会に戻すべきではない。
と、僕は考えているのです。
さいごに…
僕は、法学者でも、政治家でもありません。
物事の本質と、
そのあるべき姿について、
論理的に考え、表現するのが好きな、
ただの、しがないミニマリストです。
今回の一連の記事の内容は、
あくまで、僕の個人としての意見です。
ご指摘があれば、真摯に受け止めたいと思います。
少しでも犯罪が減って、
被害者や、善良な国民が納得することができる。
僕は、そんな刑罰の在り方が望ましいと、
一国民として、思っているに過ぎません。
刑罰の本質は『応報』である。
だからこそ、
刑罰の在り方を応報に寄せることで、
更生・抑止・隔離という、副次的な機能も、
より健全に働くはずだと、僕は考えています。
それでは最後に…
この長い記事を、
最後まで読んでくださったみなさんに、
心から感謝を申し上げます。
ご清覧いただき、本当にありがとうございました。