なぜ、天皇の政治的発言はタブーなのか?
カネコなんで天皇は政治的な発言をしちゃいけないんだろう?



皇室=自分たちの家のことについて、意見表明できないのはおかしいんじゃないの?


制度に関わる事項については、私から言及することは控えたいと思いますが、皇室の在り方や活動の基本は、国民の幸福を常に願い、国民と苦楽を共にすることだと考えており、こうした皇族数の確保の在り方についての議論においても、国民の皆さんの理解が得られるものとなることを望んでおります。
引用元:宮内庁HP オランダ及びベルギーご訪問に際し(令和8年)会見年月日:令和8年6月11日
https://www.kunaicho.go.jp/watch/okotoba/imperial-family01/press-conference/2026nld-bel.html
憲法第4条が根拠とされている
第四条
天皇は、この憲法の定める国事に関する行為のみを行ひ、国政に関する権能を有しない。
② 天皇は、法律の定めるところにより、その国事に関する行為を委任することができる。



天皇は国政に関する権能を持たないことから、天皇の政治的な発言には強い制約があると解釈されているわけですね。
でも、
「国政に関する権能を持たないこと」と、
「政治的な発言に強い制約があること」は、
どう繋がるのでしょうか?
その答えを知るためには、
まず、憲法第4条の制定趣旨を知る必要があります。
憲法第4条の制定趣旨は?



戦前の大日本帝国憲法では「天皇は統治権を総攬する」とされていました。
なのに、戦後に制定された日本国憲法では「天皇は国政に関する権能を有しない」と変更されたのはなんでなの?っていう話です。
端的に言えば、
戦争の反省として、
天皇を政治から切り離すため
ということになります。
ここで、誤解をしてほしくないのは、



天皇が自ら政治を動かして、日本を戦争へ導いてしまったことへの反省なんですね!
ということではない、ということです。
確かに、
戦前の天皇には、最終決定権がありました。
しかし、
実際の政治は、天皇自身ではなく、
政府などの統治機関が担っていました。
では、なぜ、戦前の日本は、
戦争へと突き進んでいってしまったのか?
その大きな要因の一つは、
当時の政府や軍部などが、
戦争政策の正当性を支えるために、
天皇の『権威』を用い、
その『権威』が社会に影響力を及ぼしたことです。



お国のため、
陛下のための戦争だ!
反対する者は非国民だ!



お国のため!
陛下のため!
欲しがりません、
勝つまでは!
※昭和18年当時の標語
このように、
天皇の『権威』を背景にした、
同調圧力に似た、世の中の空気の中で、
当時の日本は、
戦争へと突き進んでいってしまったのです。
時に、『権威』は『権力』よりも強し
少し話は逸れますが、
ここで一旦立ち止まって、
振り返りつつ考えたいことがあります。
それは、『権威』と『権力』の違いです。
『権威』…「従わなきゃ」と思わせる力
『権力』…命令に強制的に従わせる力
そして、時として、
法的拘束力のある『権力』よりも、
法的拘束力のない『権威』のほうが、
人々の行動に大きな影響を与えることがある
ということについてです。



先ほど説明した戦前の日本の姿も、その一例と言えるでしょう。
『権威』は残すが、政治に影響しないように
先に述べたような反省から、
戦後に制定された日本国憲法では、
天皇に『権力』を持たせないようにしました。
それが、
天皇は、国政に関する権能を有しない。
という、憲法第4条の規定です。
しかし、それだけでは、
戦争の反省として、
天皇を政治から切り離す
ということが達成されません。
なぜなら、
天皇の『権威』は、
法的拘束力とは別の次元で、
国民を拘束しうるほど、強大だからです。
そのため、
- 天皇に『権力』は持たせない(憲法第4条)
- 天皇の『権威』が政治に影響を及ぼさないよう、天皇の政治的な発言には強い制約があると解釈する
という運用がされており、
- 政治家が天皇の『権威』を政治利用できないように
- 天皇の『権威』が政治に影響を及ぼし、民主主義が機能不全にならないように
することが期待されているのです。
憲法第1条も根拠とされている
第一条
天皇は、日本国の象徴であり日本国民統合の象徴であって、この地位は、主権の存する日本国民の総意に基く。



日本国民統合の象徴という立場からも、天皇の政治的な発言には強い制約があると解釈されているわけですね。
つまり、こういうことです。
国民は、それぞれ様々な政治思想を持っています。
にもかかわらず、仮に天皇が、



私は、この政治課題については、こういう政策がいいと思っています。
と、おっしゃったらどうでしょうか?
その政策に賛成の人は、



陛下は、国民の私を象徴してくれている
と思うかもしれませんが、
その政策に反対の人は、



陛下は、国民の私を象徴してくれてない
と思ってしまうかもしれません。
このようなことを防ぎ、
全国民が、
天皇を日本国民統合の象徴と思えるように、
天皇の政治的な発言には強い制約がある
という運用がなされているのです。
しかし、
戦前の反省や、
象徴天皇のあるべき姿の観点から、
一般の政策課題について、
天皇が政治的発言を控えるのは、わかります。
ですが、
皇室に関わること、中でも、
天皇の退位や皇位継承についてなど、
天皇や皇族方の人生に関わることについてまで、
それを『政治的発言』と捉えて制限するべきなのか?
これには、議論の余地があると思うのです。
続きます。








